長い飛行機雲 (PSR J2030+4415)
--------------------------- 飛行機雲のようなものが宇宙空間に現れることが時々あります。 ジェット機に対応する天体はパルサーと呼ばれる星です。 周期的なパルスを出すのでパルスとスターの合成語でパルサーという名前がつきました。 一つの市町村くらいの大きさの星(半径10キロくらい)ですので、 星の王子様がいそうなくらいです。 パルサーが作る雲で有名なものは ギター星雲と呼ばれる図1のようなものです。 矢印の方向にパルサーが飛んでいて、 その後方にうっすらと楽器のギターにそっくりなパターンを残しているのがわかるでしょうか。 青色は可視光での画像ですが、 同じ場所をX線カメラで撮影したものがピンク色で重ねてあります。 こちらが飛行機雲みたいな筋です。 ギター星雲の方向に飛行機雲ができるならわかるのですが、 ジェット機であるパルサーから斜め右後方に筋ができるのは 「なんじゃこりゃ」という感じです。 これ一枚だけだと、 パルサーとは関係ない別の雲がたまたま重なって見えているのかもしれませんね。 ところが最近、 スタンフォード大学のプリースさんとロマーニさんは、 図2のような別のパルサーに長い飛行機雲のようなものを調査して論文を発表しました。 図2左では、赤い色が可視光で青い色がX線です。 青い筋が微かですが左上Pから右下Qに走っていますね。 筋の長さは7光年もあります。 左上の四角で囲った部分の拡大図が図2右です。 これを見ると、パルサーは上方向に走っていて、 下の方に、やはりギター星雲のようなものが見えます。 なぜこのような飛行機雲のようなものができるかはわかっていませんが、 パルサーで作られた高エネルギーの電子・陽電子の一部が磁気再結合という現象で 漏れ出し、磁力線に沿ってたなびいているのでないか、 とプリースさんとロマーニさんは言っています。 それにしても不思議な飛行機雲です。
図1 ギター星雲 (提供: NASA/CXC/SAO, NASA/STScI, Palomar Observatory, DSS, NSF/NRAO/VLA; LCO/IMACS/MMTF ) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/720-fig1.jpg
図2 パルサ PSR J2030+4415 からのびる謎の筋 (提供:NASA/CXC/Stanford Univ./M. de Vries; NSF/AURA/Gemini Consortium) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/720-fig2.jpg
本文終わり
パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/720-fig.pptx references https://chandra.harvard.edu/photo/2022/archives/more.html for fig.1 https://chandra.harvard.edu/photo/2022/j2030/ for fig.2