巨大ガス惑星の誕生 (No. 866)
date 2025 03 29 --------------------------- 3月17日から20日まで水戸市で日本天文学会が開催されました。 私も発表しましたがそれはさておき、 いくつか面白い発表があったので何回かに分けて紹介しようと思います。 木星のような巨大ガス惑星はどのように作られるのかはよくわかっていません。 出来たばかりの星の周りにはガス円盤ができます。 そしてその中で惑星が形成されます。 原始惑星系円盤と呼びます。 原始惑星系円盤を観測すると、 巨大ガス惑星については、 もう出来ちゃった状態で見つかることが多く、 できる途中の状態を観測した例はいままでないそうです。 そのため、 どのようにして巨大ガス惑星がどのようにしてできてゆくかわからないわけです。 ここでちょっと脱線してブラックホールの話をします。 中心天体であるブラックホールがガスを吸い込む時に、 周りに円盤ができてぐるぐるまわりなが中心天体に落ち込んでいくことが知られています。 このとき同時に、 円盤と垂直にガスの外向きの流れが生じます(図1)。 これはブラックホールからのジェットとしてよく知られています。 実はこのことはブラックホール特有のことではなく、 星ができる時も同様なことが起こることが知られています。 星の赤ちゃんができて、それが周りのガスを吸い込んで成長する場合も、 周りに円盤を作り、同時に円盤に垂直方向に図1のような外向きの流れができます。 だとすると、 巨大ガス惑星の卵がガスを吸い寄せて成長する時も外向きの流れができるかもしれません。 そういった観点で国立天文台の吉田有宏さんの研究チームはアルマ望遠鏡のデータを解析し、 実際に、そのような流れを探し当てたと発表しました。 図2は原始惑星系の円盤の観測画像です。 ガス惑星の卵が地球質量の4倍くらいまで成長した段階にある部分があり、 そこから酸化硫黄(SO)からの電波信号が捉えられました。 赤の点線で示したような流れあると解釈されました。 ガス惑星が成長中であることがこれで予想されます。 銀河スケールのブラックホールから、星や惑星という小さなスケールまで 図1で示した構造は普遍的に存在するのですね。
図1 中心天体の周りの円盤とジェット (提供:Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics) あるいは (提供:https://pweb.cfa.harvard.edu/news/jets-are-real-drag) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/866-fig1.jpg
図2 原始惑星系円盤にみられたガスの流れ(出展:吉田有宏ほか、アストロフィジカル誌, 971, L15, 2024) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/866-fig2.jpg
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