ニンジャサット (No. 875)

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date 2025 05 31
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今週は中性子星の研究のために埼玉県和光市の理化学研究所に来ています。
中性子星の話題もたくさんありますが、観測機に注目してニンジャサットという小型衛星の紹介をしたいと思います。
理化学研究所の玉川徹さん、榎戸輝揚さんらのチームが2023年11月に打ち上げた人工衛星ですが、
この人工衛星に搭載した超小型のX線望遠鏡を作った武田朋志さん(広島大学)にお話を聞きました。

図1は
ニンジャサットの実物大モデルと武田さんです。
こんなに小さなものが宇宙に出てX線星を観測できるのですね。
衛星の中には、X線望遠鏡本体はもとより、
星を見ながら目的天体の位置を確認するスタートラッカー、
姿勢を制御するためのホイール、電源装置などがぎっしり詰まっています。
X線バーストという突然X線で光だす天体があります。
X線バーストが起こると、
その情報を受けてニンジャサットをその天体の方向に向け、
長時間その天体の変化を詳しく観察することができます。
スケジュールがガチガチに決まっている大型の宇宙望遠鏡ではできない
小型衛星ならではの機動性です。

もう一つの素晴らしいことは、
少人数のグループで非常に短い時間で、費用も少なく人工衛星をつくることができる点です。
パンデミックに影響を受けたにもかかわらず三年すこしで衛星を完成させ
昨年から観測が始まりました。
武田さんの場合、大学院在学中に
設計から始まって、制作、打ち上げ、観測、観測結果を論文で発表するまでを
成し遂げるという快挙となりました。
従来の宇宙望遠鏡ならば10年、20年という時間がかかってしまい、若手の研究者が
設計から観測までを体験することができませんでした。

図2は搭載されたX線望遠鏡の本体です。
写真の上の方からX線が入射し、コリメーターといいう細い通路を通って、
中程の空洞に詰め込まれたガスをイオン化します。
できた電子を高電圧で加速し、電気信号として取り出すことでX線を検出する仕組みです。
ネジの一本一本を締めることから、
我が子を育てるようにX線望遠鏡を組み立て、
それが最終的に宇宙空間に出て、観測できた時か感動的だったそうです。
ものづくりとそれを用いた未知の世界の解明というのはサイエンスの醍醐味ですね。
ニンジャサットのチームの皆さんおめでとう!と申し上げたいです。




図1 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/875-fig1.jpg
図2 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/875-fig2.jpg
図3 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/875-fig3.jpg
本文終わり   (他の記事も読む)(homeへ)
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