二度爆発する超新星 (No. 881)

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date 2025 07 12
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超新星爆発と呼ばれる現象が宇宙にはあります。
星が一生の最後にこの爆発を起こして終焉となります。
爆発の後に残される飛び散った星のかけらが星雲となって見えますが、
これを超新星残骸と呼んでいます。

この話からすると爆発は一つの星について一度っきりです。
ところが、一つの星が2回爆発することが稀にあります。
その確実な証拠となる観測についての研究発表が、
7月2日付のネイチャー・アストロノミーに発表されたので紹介しようと思います。
オーストラリアのニュー・サウス・ウエールズ大学のダス・プリヤムさんのチームが、
ヨーロッパ南天天文台のVLT望遠鏡を用いて、
超新星残骸のSNR 0509-67.5を撮影した画像が図1です。
綺麗な球形の爆風が広がって宇宙のシャポン玉のようです。

よく見るとシャボン玉が二層に分かれているのが見えるでしょうか。
最初の爆発の爆風が外側のオレンジ色とそれに重なってすぐ内側に青く見えている部分で、
2回目の爆発の爆風がより内側の青いシャボン玉です。
なお、オレンジ色は水素原子から出ている光、
青く見えているのはカルシウム原子から出ている光です。

2回の爆発は次のように考えられています。
図2のように、
白色矮星と呼ばれる地球サイズの小さな星と太陽の100倍ものサイズがある巨星が
対になってお互いに回りあっています。連星という状況です。
この時、巨星からガスが白色矮星に向かって落ちていきます。
ガスは回りながら落ちて聞くので、
白色矮星の周りにはガスが渦巻く円盤ができています。

少しづつですが白色矮星の表面に巨星からのガスが降り積もっていきます。
やがて白色矮星全体としての重さがある限界を超えると、
白色矮星の中心で核反応が爆発的に起こり、星は雲消霧散してしまいます。
これだと爆発は一回です。
2回爆発の場合はすこしちがいます。
まず、白色矮星の表面で核反応による最初の爆発が起こります。
爆風は外に向かいますが、同時に内側に波として伝わります。
この波が中心での爆発的核反応を誘発し、2回目の爆発に至り、最後に星は雲照霧散します。

今日紹介した爆発は連星の中でおこりましたが、
単独の星が爆発する場合もあります。
星にも個性や置かれた状況で、爆発したりしなかったり、爆発の回数も1回だったり2回だったり
いろいろな運命があるのですね。





図1 超新星残骸のSNR 0509-67.5 (提供:ESO/P. Das et al. Background stars (Hubble): K. Noll et al.) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/881-fig1.jpg
図2 超新星爆発を起こす前(提供:ESO) http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/881-fig2.jpg
本文終わり   (他の記事も読む)(homeへ)
パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/881-fig.pptx pptx references will be note-881 For the first time, astronomers have obtained visual evidence that a star met its end by detonating twice. By studying the centuries-old remains of supernova SNR 0509-67.5 with the European Southern Observatory’s Very Large Telescope (ESO’s VLT), they have found patterns that confirm its star suffered a pair of explosive blasts. Published today, this discovery shows some of the most important explosions in the Universe in a new light. “Calcium in a supernova remnant shows the fingerprint of a sub-Chandrasekhar mass explosion” to appear in Nature Astronomy at https://www.nature.com/articles/s41550-025-02589-5 (doi: 10.1038/s41550-025-02589-5). 2 July 2025 publ. https://www.eso.org/public/news/eso2511/ Left : artist's impression of the favoured configuration for the progenitor system of SN2006X before the explosion. https://www.eso.org/public/images/eso0731b/